結婚まで物語[第12話:結婚まであと3日(PART2)]-『ぷらむずぶっく』

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★独り言★

独り言はありませーん。

結婚まであと3日(PART2)

「え?何のこと?」

訳が分からず、僕はそんなことを口走りました。

彼女の荷物はほとんど社宅へ運んでいたのですが、そこから喪服を持って来てくれ、と言うのです。もしもの時には、社宅へ喪服を取りにくる時間がない、本当に危ない状態なのだと。

僕は慌てて彼女の喪服を手に、病院へ向かいました。何か、彼女が大袈裟な話をしているように感じて、"本当に危ない"という言葉がなかなか信じられず、ピンときませんでした。

電車を利用して、社宅からは1時間ほどで到着。

もう夜の10時を過ぎていて、外来のロビーは薄暗く、ひっそりとしています。

彼女はロビーへ降りてきて僕を待っていました。喪服を手渡し、容態を尋ねようとすると、彼女は僕に一緒に病室まで来てくれ、と言います。僕も病室へと向かいました。

病室へ着くと、驚きました。親戚の人たちが集まっているのです。そして、彼女と僕が病室へ着き、そのわずか数分後に、大勢の人たちに看取られて、お父さんは亡くなったのでした。

いくら"危ない"とは言え、まさか、自分が到着して、それを待っていたかのようにたったの数分で亡くなってしまうなんて・・・。信じられない思いでした。

実は、僕は人の死に目に立ち会ったのは生まれて初めてでした。ドラマのような光景でした。オシロスコープのような機器の、心音を示す波形がまっすぐになり、医者が「残念ながら・・・」と頭を下げ、彼女を始め、そしてこの時初めて会ったお姉さん達が泣き崩れたのでした。

僕にとっては非常に現実感に乏しい光景でした。

夢を見ているような気分で、呆然とその場に立ち尽くしていました

「お父さんの顔、見てあげて」とお姉さんが僕を枕元へ招きます。

複雑な思いでした。反対を続けられていた頃は憎んでもいました。でも、言い合いをしたあの日からわずか半年後にこんなことになるなんて、一体誰が予想できたでしょう。

お父さんとは、結婚してからも戦わないといけないかもしれない、そんな事も考えていたのですが、戦いはあっけなく終わってしまったのでした。

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