結婚まで物語[第9話:結婚まであと1ヶ月] -『ぷらむずぶっく』

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★独り言★

独り言はありませーん。

結婚まであと1ヶ月

詳しいことは分かりませんが、彼女のお父さんが罹った肺ガンは手術しにくい場所にあるという話で、しばらく薬による治療がなされることになりました。

早目に手術してしまった方が、いいんとちゃうのん?と、素人は思うのですが、そういうものでもないらしいのです。

そして、医学書によれば、余命が数ヶ月の場合もあれば20年生きた例もある、ということで、すぐにどうこうという話ではないかもしれないし、その点は少し安心できる材料でした。

病院からは、うまくいけば3ヶ月で退院できるでしょう、と言われていたらしく、その話を聞いて僕は「そんなものなんか、とりあえずは良かったな」と言いながら拍子抜けしたような気持ちでした。

まだ面会謝絶ということで、僕はこの時点でお父さんに会うことはできなかったので、彼女の話を聞いて一喜一憂するしかありません。

最初に3ヶ月の入院とは言われていても、実際にお父さんを見て「今日はとても具合が悪そうだった」とか「薬の副作用がかなりあるみたい」とか言う彼女はやはり心配そうです。

僕はともかくとして、彼女はお父さんがそういう状態にあるのに結婚の準備をしなければならない状況に置かれ、かなり精神的に疲れていたのではないでしょうか。

しかも、退院してすぐにお父さんが結婚式に出席できるかどうかは分かりません。

状態は急速には良くならず、お父さんの出席は無理かもしれないという前提条件を含みつつ、とりあえず結婚式を挙げる方向で僕たちは準備を進めていくのでした。

家族同士の顔合わせも、普通なら結納ということになるのでしょうが、彼女のお父さん抜きで食事会というような形で行われました。お母さんも毎日病院へ通っているので疲れている様子でした。

そしてその時期に、僕はマンションから会社の社宅へ引越しをしました。彼女の荷物も少しずつ運び込まれ、結婚するという実感も少しずつ沸いてくるのでした。

お父さんの容態は心配ですが、僕たちは結婚へ向かって少しずつ前進していたのです。

そう、前進していたはずだったのです・・・。

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