結婚まで物語[第5話:結婚まであと1年] -『ぷらむずぶっく』

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★独り言★

独り言はありませーん。

結婚まであと1年

初めて彼女の両親と会ったときの印象は"優しい感じ"。それまでずっと彼女から聞いていたイメージとは異なっていました。

ところが2回目には"噂通りの頑固者"。これは一筋縄ではいかないなと思いました。

案の定、彼女の話だと家では大反対しているということでした。僕自身に問題があるというわけではなく、曰く「土地を持っていない」、「家柄が釣り合わない」ということを問題にしているので、僕にはどうしようもありません。

ただ、僕に直接そういうことを言うかなぁ、面と向かってはあんまり言えない人たちだから、と彼女は言っていたのですが。

でも一応、戦いに備えて色々彼女と作戦を練りました。が、「僕自身を見てくれ」、「ちゃんとした会社でしっかりと働いているのだから何の心配もない」、「家柄がどうとか、実家がマンション住まいだとか関係ない」というようなセリフを考えるのが関の山でした。まるっきり正攻法しか思い浮かばなかったのです。

そして釣書を持っていく当日。彼女の親は釣書など見なくてもはなっから反対するつもりなのですから、よくある"彼女の親に挨拶に行くときは緊張する"というのとは違っていました。ひたすら憂鬱でした。

何を言われても真っ向から反論してやる、と一応は意気込んでいたのですが、試合開始直後の先制パンチはかなり効きました。

「去年、事故に遭ったよなぁ」
「は、はあ(何の話や?)。その節はご迷惑をおかけしました」
「まあ、あれは相手が悪いのだし、君を責めるつもりはない」
「・・・・・・(相手の出方を窺っているけど、いまいち真意が見抜けない)」
「しかし、ああいう事故に遭うということは二人は不幸な星の下に生まれてきたのだと思うんだ。そういう二人の結婚には賛成できない。君たちが幸せになれないのは分かってるのだから」

どっかーん。

絶句するしかありませんでした。言い返す言葉も見当たりません。一体この世の中に「不幸な星の下に生まれた」という理由で結婚を反対されるカップルがどれだけいることでしょう。

彼女の親としては理由なんてなんでもいいからとにかく反対したかったのでしょうけど、そうは言ってもあんまりです。

結局、「友達としてなら付き合ってもよろしい」などと見当外れの戯れ言をのたまう彼女の親に、「たとえどんな理由で反対されようとも、彼女との結婚を諦めるつもりはありません」と宣言して、その日は終わったのでした。

相手が一枚上手でした。僕の負けでした。真っ向から勝負すれば、どう考えても僕の言うことに間違いはない(法的には成人した男女は親の許可なしで結婚できるのですしね)ので勝ち目はない、ならば死角から攻めてやれ、と考えたわけでもないのでしょうが。

それからも彼女は家で、親に抗議してくれてはいたのですが、やっぱり親は聞く耳もたずでした。

そのうち、二人の間で、「いざとなれば親と喧嘩して家を出れば?」という話になってきました。「でも私が家を出てもいくところがないもん」と彼女が言うので、僕は彼女をかくまうことができない会社の寮を出て、マンションを借りることにしたのです。

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